前回のブログ「料理の鉄人に勝利した女性シェフ」で、その女性シェフがエグゼクティブシェフを勤めていた「誤時」というフレンチレストランに、Nさんという人に連れて行ってもらったことを書きました。
Nさんとの出会い
2004年、IT関係のコンサルティング会社で仕事をしていました。1990年代後半、韓国はインターネット世界では世界的にも最先端の位置にいて、さまざまなビジネスモデルや技術で溢れかえっており、日本よりははるか先をいっていた状況でした。
その韓国のビジネスモデルや技術を日本企業に結びつける仕事をしていたのですが、その中の一つに韓国で流行っていた電子書籍技術を日本企業に結びつけるプロジェクトに携わっていた時、技術コンサルタントとしてにNさんと契約、仕事をご一緒することになったのですが、Nさんの会社案内を見た時、そりゃびっくりしました。会社案内の冒頭この詩で始まっているんです。
一瞬でも幸せになりたいなら 好きなものを食べなさい
一時間幸せになりたいなら 仲のいい人と話しなさい
一日幸せになりたいたら 大好きな人と出かけなさい
毎日幸せになりたいなら 今が幸せであることに気づきなさい
あのですね、会社概要の冒頭ですよ。しかも目の前に座っている代表のNさんは、左側の髪が寝癖でピンと立っていて(昔からの定番の寝癖と後々判明)、ブスッと機嫌の悪そうな顔で、声を低音で、この詩からは相当程遠い印象でした(笑)。
NさんはCSKで長年、技術本部の取締役をされていた、風変わりな天才肌(あ、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」見ました?素敵なドラマですよ^^)の人で、なんか妙に迫力というか強烈な圧迫感があるんです。怒っても怒鳴ることはないんですが、もう滅茶苦茶怖い(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
電子書籍時代の到来
Nさんと仕事を一緒にするようになった理由はこれでした。
2005年には韓国製の電子書籍を数社に納品、その中には日経も含まれていましたが、テスト採用的なものでした。日経でも将来に向けいろいろ模索していた時期だっと思います。この時はほぼ韓国製だったのですが、次世代の電子書籍を採用してもらうためのローカライゼーション(ソフトウェア製品を、ターゲット市場の言語、文化、技術的要件に適合させるプロセス )の取り組みを始めるにあたり、Nさんと出会うことになったわけです。
Nさんのノート
これはその時のNさんの電子書籍開発ノートで、思索と構造化のメモ集です。僕の大切な宝物で、今でも時々眺めたりするんです。え?内容理解しているかですって?いえ、全然(笑)
当時日本では「Flash」というAdobe社の技術をベースにしたものがほとんどでしたが、韓国版は全く異なる技術基盤のソフトでした。ローカライゼーションは私たちだけではできないので、日本のシステム開発会社ヴァニラスタジオ と提携し開発を進めていきました。同社の社長はNさんのCSK当時の部下で、一番弟子の一人です。
ヴァニラスタオは30人ほどの小さな開発会社なんですが、実力はすごかった!
この規模で大型のシステム開発プロジェクトに参加する場合、孫請け、ひ孫請け程度が普通なんですが、大手とほぼダイレクトに取引していたんです。詳しい社名やプロジェクトの内容は公開することはできませんが、一つだけ! JAXAからの依頼で社員が数ヶ月間NASAに常駐していたことがあります。そういうレベルの会社でした。
技術はさまざまに花を開かせる
どの企業が次世代の電子書籍を日経に納品するのか?
たくさんの候補社から最終選考に残ったのは、NEC、A社、そして何と私たちでした。結果はA社のシステムになったのですが、このご縁で私(と我が奥様)はヴァニラスタジオで仕事をするようになりました。
日経から受注することはできませんでしたが、その時開発した技術の一部は別の形で花開きました。
「国立文化財機構の4つの国立博物館 (東京国立博物館、京都国立博物館、 奈良国立博物館、九州国立博物館)と研究所(奈良文化財研究所)が 所蔵する国宝・重要文化財の高精細画像を、多言語(日本語、英語、中国語、韓国語)による解説とともにご覧いただくことができます」(同HPより)
一番最初の立ち上げの時にヴァニラスタジオのシステムが採用されました。
ちょっと覗いてみて下さい。画像をクリックするどんどん拡大されていって、驚くほど詳細な部分まで見ることができます。これだけの巨大な画像をウェブ上でサクサク見せるには、非常に特殊な技術が必要です。
今のシステムはもう別の企業が提供していますが、ベースはヴァニラスタジオで開発してものです。ただ拡大・縮小のスムーズさが失われているようですね。
我が奥様はウェブのデザイン設計を担当していたと思います。
8月に久しぶりにヴァニラスタジオの社長、当時の電子書籍開発スタッフの一人と私と我が奥様の4人で会食(そして全員揃ってコロナに感染!)しました。本当はNさんもお誘いしたかったのですが、今は体調が思わしくないとのこと。近いうちに「誤時」のシェフだったが開いた三軒茶屋の「サンフラド」にお連れしたいなと思っています。